GC/MS混合標準液の分析 後編アジレント・テクノロジー株式会社 滝埜 昌彦氏

目次

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GC/MS混合標準液の分析 前編

PL2005農薬GC/MS Mix Ⅳ

表9に判定結果、図4に1 ppbでのMRMクロマトグラムを示した。50農薬全ての測定が可能であったが、エトベンザニド代謝物は1 ppbでS/N<10であった(10 ppbで測定可能)。シクロコナゾールとトリデモルフは異性体を含むことから複数ピークが検出された。トリデモルフは炭素数の異なる同族体も存在するが、今回は主成分である分子質量が297の化合物のみ測定した。

表9 GC/MS Mix Ⅳの農薬及び判定結果
表9 GC/MS Mix Ⅳの農薬及び判定結果

図4-1 GC/MS Mix Ⅳ(1ppb)のMRMクロマトグラム
図4-1 GC/MS Mix Ⅳ(1ppb)のMRMクロマトグラム

図4-2 GC/MS Mix Ⅳ(1 ppb)のMRMクロマトグラム

図4-2 GC/MS Mix Ⅳ(1 ppb)のMRMクロマトグラム
図4-2 GC/MS Mix Ⅳ(1 ppb)のMRMクロマトグラム

PL2005農薬GC/MS MixⅤ

表10に判定結果、図5に1 ppbでのMRMクロマトグラムを示した。52農薬中40農薬測定が可能であったが、キノメチオネート及びチオシクラムは1 ppbでS/N<10であった。(両農薬共、10ppbで測定可能)一方、BHC類、キャプタン、キャプタホール、TPN、クロルプロピレート、CNP、ホルペット、ニトロフェン及びピロパニルは測定困難であった。ジクロシメット、ブロモコナゾール、テトラメトリンは異性体を含むことからピークが2本検出された。

表10 GC/MS Mix Ⅴの農薬及び判定結果
表10 GC/MS Mix Ⅴの農薬及び判定結果

図5-1 GC/MS MixⅤ(1 ppb)のMRMクロマトグラム
図5-1 GC/MS MixⅤ(1 ppb)のMRMクロマトグラム

図5-2 GC/MS MixⅤ(1 ppb)のMRMクロマトグラム 図5-2 GC/MS MixⅤ(1 ppb)のMRMクロマトグラム

PL2005農薬GC/MS Mix Ⅵ

表11に判定結果、図6に1 ppbでのMRMクロマトグラムを示した。49農薬中46農薬測定が可能であったが、ネライストキシン及びオキシスポコナゾールは1 ppbで検出できなかった。(両農薬共、10 ppbで測定可能)一方、クロルメホス、MCPBエチルエステル及びジオキサチオンは測定困難であった。フェリムゾン、ジメトモルフ及びフェノトリンは異性体を含むことからピークが2本検出された。

表11 GC/MS Mix Ⅵの農薬及び判定結果
表11 GC/MS Mix Ⅵの農薬及び判定結果

図6-1 GC/MS Mix Ⅵ(1 ppb)のMRMクロマトグラム

図6-1 GC/MS Mix Ⅵ(1 ppb)のMRMクロマトグラム
図6-1 GC/MS Mix Ⅵ(1 ppb)のMRMクロマトグラム

図6-2 GC/MS Mix Ⅵ(1 ppb)のMRMクロマトグラム
図6-2 GC/MS Mix Ⅵ(1 ppb)のMRMクロマトグラム

PL2005農薬GC/MS Mix 7

表12に判定結果、図7に1 ppbでのMRMクロマトグラムを示した。49農薬中41農薬測定が可能であった。一方、クロロネブ、クロルベンジド、クロルエトキシホス、クロゾリネート、フリラゾール、メトキシクロル及びペンラルは測定困難であった。

表12 GC/MS Mix 7の農薬及び判定結果
表12 GC/MS Mix 7の農薬及び判定結果

図7 GC/MS Mix 7(1 ppb)のMRMクロマトグラム

図7 GC/MS Mix 7(1 ppb)のMRMクロマトグラム
図7 GC/MS Mix 7(1 ppb)のMRMクロマトグラム

図8 測定が困難であった農薬の構造式

図8 測定が困難であった農薬の構造式

図8 測定が困難であった農薬の構造式
図8 測定が困難であった農薬の構造式

図9 ピレスロイド系農薬の構造式
図9 ピレスロイド系農薬の構造式

以上、GC/MS MixⅠ~7についてLC-MSを使用して検討を行ったが、約10%にあたる39農薬が測定できなかったが多くの農薬で測定が可能であった。最近のLC-MSで使用されているイオン源は数十年前の開発当初のESIのイオン化メカニズムとも若干異なってきており幅広い農薬の測定が可能であった。測定が困難であった農薬の構造式は図8に示した。これら農薬は極めて極性の低い農薬であった。また、今回測定したピレスロイド系農薬の構造式を図9に示したが、テフルトリンのみ測定が困難であり、テフルトリンのみがエステル結合した骨格に酸素を含まない構造であった。
今回は農薬標準混合液を使用して多成分一斉分析で検討したが、キャプタン、キャプタホール、ホルペットなど一斉分析の条件では測定困難であるが、個別分析でイオン源条件を最適化した場合、1 ppb程度の測定が可能な農薬もあると考えられる。

引用文献

  1. 道衛研所報 Rep. Hokkaido Inst. Pub. Health,67,41-56(2017) DE40569905

*本記事は2024年1月に執筆いただいた情報です。

Profile

滝埜 昌彦氏

アジレント・テクノロジー株式会社(https://www.chem-agilent.com/
クロマトグラフィー・質量分析営業部門
(LC・LC/MSグループ)
シニアアプリケーションスペシャリスト

学歴
京都薬科大学 製薬化学科 卒業
大阪府立大学 大学院 工学研究科 博士後期課程 物質系専攻 応用化学分野 修了(博士(工学))

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GC-MS用農薬混合標準液(当社製品、PL2005農薬GC/MS Mix Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ)を用いて、LC-MSで測定を行い測定に適しているかの評価を行っていただきました。