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カールフィッシャー法の基礎知識
目次
カールフィッシャー法について
サンプルに含まれる水分量を測定する方法は多数ありますが、代表的な測定法として広く利用されているのが「カールフィッシャー法」です。
カールフィッシャー法は、1935年にドイツの化学者カール・フィッシャー(Karl Fischer、1901~1958)によって発明されました。
比較的簡単でありながら、精度が高く、信頼性も優れているため幅広く使用されています。
カールフィッシャー法では、水とヨウ素の化学反応を利用します。
ヨウ素は、水と一定の割合(1:1)で反応し、サンプルに含まれる水分と同量のヨウ素だけが消費されるため、この消費されたヨウ素の量から水分量を求めることができます。実際の測定には、ヨウ素にアルコールや二酸化硫黄(SO2)、塩基物質(ピリジンなど)を加えたカールフィッシャー試薬を利用します。測定精度や信頼性を確保するためには、適切なカールフィッシャー試薬の準備が重要です。
水分測定の必要性
製薬、化学、食品などさまざまな分野において、原料や製品の水分量を正確に把握することは、品質を管理する上で非常に重要です。水(H2O)は地球上に約14億km3存在し、空気中にも含まれているので、環境によっては製品などの水分量が増減します。
一方で、身の回りにある多くの製品の水分量は規格化されています。
- コスト管理 原油の場合、原油中の水分量は原価に影響するため、正確な水分量の把握が必要です。水分量が多くなれば相対的に原油量は減少し、原価が上がるため、コストを正確に管理することが難しくなります。
- 安全性 火薬や爆薬などの爆発物の場合、水分量によって爆発しやすくなるため、水分量を精密に管理する必要があります。安全性を担保するためには、微量の水分量の測定が不可欠です。
- 品質保持期限 食品などの品質や微生物学的安全性は、水分量に影響を受けます。例えば、飴は水分値の管理が不適切だと、飴が包装紙に張り付いたり、手に持ったときにベタついたりします。一定期間品質を保持するためには、水分量の管理が不可欠です。
カールフィッシャー法の利点
-
汎用性・難易度
カールフィッシャー法は、最も広く使用されている水分測定法です。
測定装置や試薬、操作方法などに関する情報や知見が多く、高度な測定技術を必要としません。比較的簡単に測定可能な装置やカールフィッシャー試薬が開発されています。 - 精度 カールフィッシャー水分計を使用することで、高精度な測定が比較的簡単に行えます。日本薬局方(JP)や日本産業規格(JIS)などの公定試験法にも対応しています。
- トレーサビリティ 水標準品を使用することで、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)や日本計量標準総合センター(NMIJ)などの国際計量機関で承認されたトレーサビリティを確保できます。
- 幅広い測定範囲 ppmの極微量から100%の水分量まで測定できます。
- 迅速な測定 サンプルの調製などの前処理後、水分測定に要する時間はおおむね1分~3 分程度と短時間で測定できます。
- pH5~7で測定が容易 pHが5~7の条件に当てはまっていれば、測定は容易に行えます。
- 多数の品質管理プロトコルに対応水分測定は、多くの品質管理の規定(プロトコル)で必須となっていますが、カールフィッシャー法は以下の規定に対応しています。
規定 | 内容 |
---|---|
日本薬局方 (JP:Japanese Pharmacopoeia) |
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第41条により、医薬品の性状及び品質の適正を図るため、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定めた医薬品の規格基準書 |
日本産業規格 (JIS:Japanese Industrial Standards) |
産業標準化法(JIS法)に基づく国家規格の一つ 製品、データ、サービスなどの種類や品質・性能、それらを確認する試験方法や評価方法などを定めている規格 |
日本農林規格 (JAS:Japanese Agricultural Standards) |
食品・農林水産分野において農林水産大臣が定める国家規格の一つ 国内市場に出回る食品・農林水産品の品質や仕様を一定の範囲・水準に揃えるための基準 |
ASTM規格 (ASTM:American Society for Testing and Materials) |
ASTMインターナショナルが発行している国際規格の一つ 製品の品質向上、健康と安全性の強化のための試験方法や仕様、分類などを定めている規格 |
米国薬局方 (USP: United States Pharmacopeia) |
米国の薬局方 米国の医薬品に関する品質規格書。試験法や純度の基準などが記されている |
欧州薬局方 (EP: European Pharmacopoeia) |
欧州の薬局方 欧州の医薬品に関する品質規格書。試験法や純度の基準などが記されている |
カールフィッシャー法の種類
容量滴定法
広範囲な水分量の測定が可能で、多様な試薬やサンプルに適用できる
容量滴定法は、1㎎以上の水分量の測定に適しています。
滴定は、ヨウ素を含んだ滴定液を使用し、サンプル中の水分と反応した滴定液の量(ヨウ素の消費量)から、水分量を求めます。
- サンプルの水分量の目安:1mg以上
- 妨害反応への対応策:多い
- 力価測定:必要
電量滴定法
微量な水分量の測定に向き、力価の測定が不要
電量滴定法は、1㎎以下の水分量の測定に適しています。
滴定は、電気分解によってヨウ素を生成し、電気分解に要した電気量から水分量を求めます。
- サンプルの水分量の目安:1mg以下
- 妨害反応への対応策:少ない
- 力価測定:不要