試薬の安定性(JIS K No.8013~)

試薬は、一般的に製造直後から徐々に劣化するもので、安定性(経時変化)については、試薬の種類により異なります。各種試薬について経時変化を起こす要因、及び貯蔵方法を下表にまとめましたので、保管・輸送時のご参考にして下さい。

JIS K No.※品名変化を起こす要因貯蔵方法備考
湿気酸素二酸化炭素温度分解(自然)その他冷所遮光気密その他
8013亜鉛粉末湿った空気中では酸素と反応して自然発火することがある
8015亜硝酸イソアミル密封、火気を避ける分解
8017亜硝酸カリウム潮解性、含量低下
8018亜硝酸銀着色(感光)硝酸塩と銀になる
8019亜硝酸ナトリウム潮解性、含量低下(カリウム塩より弱い)
8027アセチルアセトン(2,4-ペンタンジオン)徐々に黄色が濃くなる。
8029アセトアミド潮解性強い
8033アセトフェノンわずかに着色
8034アセトン水気を避ける酢酸を生じる
8042アニリン空気中で速やかに無色→黄色→褐色になる。
8045亜ひ酸カリウム吸湿性、Co2吸収して分解、亜ひ酸遊離
8046亜ひ酸ナトリウムやや吸湿性、同上
80501-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸類白色~黄褐色→褐色
8052m-アミノフェノール白色→黄色
9059p-アミノフェノール黄色→黄褐色→褐色
8058亜硫酸水ほとんど全損酸化される
8059亜硫酸水素ナトリウム30℃以下空気に触れるとSo2を失い徐々に硫酸塩になる
8060亜硫酸ナトリウム乾燥空気含量低下、風化する
8063亜りん酸潮解性、空気によりりん酸に変わる
8068アルブミン卵製分解してアンモニア臭を発する
8079安息香酸ベンジル寒冷にあうと凝固する遊離酸が増加する
8085アンモニア水揮発性(含量低下)
8090酸化鉛(Ⅱ)徐々にCo2吸収し多少塩基性炭酸鉛に変じる
8091イヌリン吸湿性
8092インジゴカルミン
8094イノシトール乾燥空気風化しやすい
8095インドール着色
8097インドール酢酸カリウム着色(白~類黄色→褐色)
8101エタノール(99.5)火気を避けるアルデヒドを生じる、吸湿性
8102エタノール(95)火気を避けるアルデヒドを生じる
8103ジエチルエーテル火気を避ける過酸化物を生じる
8105エチレングリコール吸湿性
8106エチレンクロロヒドリン徐々に分解して塩酸を生じる
81092-アミノエタノール(モノエタノールアミン)吸湿性、空気中でCo2吸収
8111塩化亜鉛潮解性
8113塩化アセチルコリン吸湿性
8115塩化アルミニウム(Ⅲ)吸湿性極めて強い、空気中で発煙
8120塩化カドミウム乾燥空気風化する
8122塩化カルシウム二水和物吸湿潮解性
8123塩化カルシウム吸湿潮解性
8124塩化カルシウム(乾燥用)吸湿潮解性
8125塩化カルシウム(水分測定用)吸湿潮解性
8126塩化銀(Ⅰ)感光、白色~灰紫色から紫黒色
8127テトラクロロ金(III)四水和物密封吸湿潮解性、帯赤黄色→紫褐色
8128塩化クロム(III)六水和物 潮解性
8129塩化コバルト(Ⅱ)六水和物潮解性
8130塩化コリン吸湿性
8133塩化スルフリル密封着色しやすい、水で分解する
8134塩化セシウム潮解性
8135塩化水銀(Ⅰ)塩化第二水銀と水銀とに分解し、灰黒色となる
8136塩化すず(Ⅱ)二水和物空気中の酸素吸収して塩基性塩が生じる。(不溶性のオキシ塩化物)
8137塩化鉄(Ⅱ)四水和物潮解性。空気中でしだいに塩基性塩になり、また第二鉄塩を生じる
8138塩化銅(Ⅰ)空気中で次第に緑を帯びる。第二銅を生じる。
8140塩化すず(Ⅳ)(塩化第二すず)吸湿性が強い
8142塩化鉄(Ⅲ)六水和物遊離塩素を生じる。潮解性
8145塩化銅(Ⅱ)二水和物潮解性
8148塩化チオニル密封水により分解しやすく亜硫酸および塩酸を生じる
8149塩化トリウム潮解性
8153ヘキサクロロ白金(Ⅳ)酸六水和物(塩化白金酸六水和物)密封潮解性が強い
8154塩化パラジウム(Ⅱ)吸湿性
8156塩化ビスマス吸湿性
8158塩化ベンゾイル水により分解する
8159塩化マグネシウム六水和物潮解性
8162塩化リチウム潮解性
8167塩基性酢酸鉛空気中のCo2を吸収して不溶性の鉛をつくる
8180塩酸空気中で発煙する。
8182塩酸アニリン空気中で次第に着色する
8185塩酸-α-ナフチルアミン白色→青色→黒色
8193塩酸ジメチル-p-フェニレンジアミン吸湿性、白色→紫色、水溶状に濁りを生じる(3ヶ月以上)
8200塩化ヒドラジニウム(2+)(塩酸ヒドラジン)吸湿性が強い
8201塩酸ヒドロキシルアミン潮解性、湿った空気中で徐々に分解
8203塩酸フェニルヒドラジニウム白色~微赤色~微紫色→紫紅色~褐色微黄色→赤色~赤褐色
8205塩酸-m-フェニレンジアミン白色~微赤色~微紫色→紫紅色~褐色
8206塩酸モノメチルアミン潮解性
8211オキシ塩化リン水が加わると発熱して分解する
8215オーラミン光により急速に退色、空気に触れて変色する
8216黄りん空気中で発火しやすい
8223過塩素酸有機物酸化されやすい物質と接触すると爆発する
8226過塩素酸カリウム有機物酸化されやすい物質と接触すると爆発する
8227過塩素酸ナトリウム有機物酸化されやすい物質と接触すると爆発する
8228過塩素酸マグネシウム有機物水気を避ける酸化されやすい物質と接触すると爆発する、潮解性
8230過酸化水素水爆発に対して配慮した容器徐々に分解し、酸素を発生する。
8231過酸化ナトリウム吸湿性、可燃性物質に触れると発火する
8232過酸化バリウム可燃性物質に触れると発火する
8240カテコール変色する
8246過ほう酸ナトリウム空気中で酸素を放出して分解
8247過マンガン酸カリウム表面分解
8248過よう素酸潮解性
8252ペルオキソ二硫酸アンモニウム(過硫酸アンモニウム)酸素を発生しながら徐々に分解、含量低下
8253ペルオキソ二硫酸カリウム(過硫酸カリウム)徐々に分解して酸性塩を生じる。水分によって分解が促進される。
8254カリウム石油中に保存空気に触れると直ちに灰色に変わる
8265ぎ酸アンモニウム潮解性
8267ぎ酸ナトリウム吸湿性
8269ジチオ炭酸-o-エチルカリウム(ギサントゲン酸カリウム)不安定
8277キナルジン酸白色~淡黄色→暗色
8279キノリン次第に着色、吸湿性
8287くえん酸鉄(Ⅲ)アンモニウム吸湿性、光により変色する
8289クペロン別に入れた炭酸アンモニウムとともに保管分解する
8294クリスタルバイオレット
8285グリセリン長期間保管すると、空気酸化によってアルデヒド化合物が増加する。
8304o-クレゾール無色→褐色
8305m-クレゾール無色→褐色
8306p-クレゾール無色→褐色
8316クロモトロープ酸二ナトリウム二水和物
8318p-トルエンスルホンクロロアミドナトリウム三水和物(クロラミンT)空気に触れて徐々に分解する。
8322クロロホルム空気又は光によって徐々に分解する。塩素、塩酸、ホスゲン、四塩化炭素などを生成。
8337けいタングステン酸(26水塩)潮解性
8338ゲンチアナバイオレットB(塩化メチルローザニリン)吸湿性
8339五塩化りん吸湿性が強い
8341五酸化よう素
8342五塩化二りん吸湿性が強い
8355酢酸寒冷時には凝固することがある。
8356酢酸亜鉛二水和物わずかに風化性
8359酢酸アンモニウム潮解性、常温で徐々にアンモニアを放出する
8361酢酸エチル光により過酸化物、湿気により酸を生じる
8363酢酸カリウム潮解性
8366酢酸コバルト(Ⅱ)四水和物やや潮解性
8368酢酸水銀(Ⅰ)白色→暗灰色(水銀)
8370酢酸銅(Ⅱ)一水和物風化する
8371酢酸ナトリウム三水和物乾燥空気風化する
8372酢酸ナトリウム吸湿性
8373酢酸-β-ナフチルアミン
8374酢酸鉛(Ⅱ)三水和物乾燥空気風化する
8377酢酸ブチル揮発性
8380酢酸マグネシウム四水和物潮解性
8390サリチルアルデヒドしだいに着色する
8392サリチル酸徐々に着色する
8397サリチル酸ナトリウム長く日光にさらすと赤褐色になる
8400塩化アンチモン(Ⅲ)吸湿性が強い
8401塩化チタン(Ⅲ)溶液酸素を吸収し、還元力、脱色力を失う
8403三塩化よう素吸湿性、分解
8410酸化カルシウム空気中でCo2及び水分を吸収する。
8411酸化銀(Ⅰ)徐々に分解
8416酸化銅(Ⅰ)徐々に酸化して第二銅となる
8418酸化水銀(Ⅱ)(黄)暗色を呈し、第一水銀と水銀に変化する
8419酸化水銀(Ⅱ)(赤)暗色を呈し、第一水銀と水銀に変化する
8428酸化バリウム水分、Co2吸収
8432酸化マグネシウム水分、Co2吸収
8433三酸化硫黄水分を吸収して白煙を生ずる
8434酸化クロム(Ⅳ)有機物潮解しやすい
8441ホスフィン酸ナトリウム一水和物(次亜りん酸ナトリウム一水和物)乾燥空気(風化)湿った空気中でやや潮解性
8443シアン化カリウム吸湿性あり。酸及び光によって分解する。酸によって猛毒で引火性のシアン化水素が発生する。
8444シアン化銀徐々に変色
8447シアン化ナトリウム潮解性あり。酸及び光によって分解する。
8453ジエタノールアミン吸湿性、空気中でCo2を吸収する
8459四塩化炭素揮発性
8460塩化チタン(Ⅳ)(四塩化チタン)湿気を吸い発煙する
84651,2-ジクロロエタン揮発性
84692,6-ジクロルフェノールインドフェノールナトリウム(水和物)
84862,2’-ジピリジル

JIS K No.8487~はこちら

※旧JIS品含む

試薬ガイドブック 第6章 試薬の安定性(経時変化)参照
JIS試薬ハンドブック 参照