核酸の医薬への応用 -人工核酸-

目次

核酸の医薬への応用

核酸の医薬への応用に際しては、核酸(特にRNA)は体内で分解されやすいことが問題となります。人体は、侵入してきたウイルスへの防御策としてヌクレアーゼを持っており、外敵の核酸を分解してしまいます。
このため、核酸を医薬品として用いるためには、分解を防ぐために化学修飾が施されることが多いです。
例えば、サイトメガロウイルス感染症治療薬のホミビルセンは、リン酸ジエステル結合部分に硫黄原子が導入され、ヌクレアーゼに対する抵抗性を持たせています。

化学修飾を利用した人工核酸の開発

化学修飾を利用した人工核酸の開発

核酸塩基・糖・リン酸ジエステル部に化学修飾を加え、水素結合様式や高次構造を変化させた核酸は人工核酸と呼ばれます。比較的古くから使用されてきたホスホロチオエートDNAやモルフォリノオリゴの他、LNAや2´-MOEといった新しい人工核酸も開発されています。

ホスホロチオエートDNA

ホスホロチオエートDNAはリン酸ジエステル結合部分の酸素原子を1つ硫黄原子に置換した人工核酸で、ヌクレアーゼ耐性があります。結合が天然の核酸より弱く、タンパク質との非特異的相互作用による細胞毒性を回避する設計などが必要となります。

モルフォリノオリゴ

モルフォリノホスホロジアミデートはアンチセンスとしてよく用いられている人工核酸であり、リボースの代わりにモルフォリン環、リン酸ジエステル結合の代わりにホスホロジアミデート結合を持っています。天然のDNA、RNAよりも結合が強く、細胞毒性も低いという優れた特徴があります。水溶性が高いことも利点です。

LNA(Locked Nucleic Acid)

LNAは、RNAの2‘位の酸素原子と4’位の炭素原子をメチレンで架橋(リボースをC3′- endo型で固定)した架橋型人工核酸です。らせん構造が固定化され、標的に対して非常に安定な二重鎖を形成することができます。
LNAはその特性として、Tm値を上昇させる、標的との結合親和性を強固するというはたらきを持ち、RNaseH活性がありません。また、ヌクレアーゼ耐性を持つので、アンチセンスやsiRNA等にも有用です。

2´-MOE(Methoxyethyl)

2′-MOEはRNAの2′位修飾の1つです。2′位がO-methoxyethyl化されています。
ヌクレアーゼ耐性や標的RNA配列との結合親和性を向上させると言われています。
2′-O-Me(Methyl)と比較してヌクレアーゼ耐性が向上するという報告もあります。

その他の人工核酸

リン酸の酸素原子ボランに置き換えたボラノホスフェートや、天然にも存在する2′-O-Methyl化RNA。骨格にペプチド結合を持つペプチド核酸なども開発が進められております。

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