カールフィッシャー法 トラブルシューティング

目次

はじめに

カールフィッシャー法で想定した結果が得られない場合、妨害反応などのトラブルが起きている可能性があります。ここではよくあるトラブルの事例について、原因と対策方法を紹介します。

カールフィッシャー試薬と妨害反応が起きる場合容量滴定法電量滴定法

測定した水分値が想定した水分値と異なる場合や、終点が来ない場合、カールフィッシャー反応以外の妨害反応が起きている可能性があります。妨害反応が起きると、想定の水分量と異なる値が出てしまい、正確な測定ができません。
原因としては、サンプルにケトン類アルデヒド類が含まれていることが挙げられます。

1.水分量が想定より多く測定される場合

サンプル中にケトン類一部のアルデヒド類が含まれている場合、カールフィッシャー試薬にメタノールが含まれていると妨害反応が起こり、水を生成し水分量が多く測定される、もしくは終点が来なくなります。

ケトン類(ケタール反応)
R-CO-R
+
2R'OH
R2C(OR')2
+
H2O
アルデヒド類(アセタール反応)
RCHO
+
2R'OH
RCH(OR')2
+
H2O

2.水分量が想定より少なく測定される場合

サンプル中に一部のアルデヒド類が含まれている場合、カールフィッシャー試薬にメタノールが含まれていると妨害反応が起こり、水を消費し水分量が少なく測定されます。

アルデヒド類(亜硫酸塩付加)
RCHO
+
SO2
+
H2O
+
NR'
HRC(OH)SO3HNR'

3.妨害反応への対応策

サンプル中にケトン類やアルデヒド類が含まれている場合、カールフィッシャー試薬にメタノールが含まれていると妨害反応が起こります。 当社では、メタノールを含まないケトン類・アルデヒド類にも使用できるカールフィッシャー試薬を取り扱っていますので、ぜひご活用ください。
※ケトン類・アルデヒド類用のカールフィッシャー試薬は、ケトン類・アルデヒド類を含んでいないサンプルでも使用可能です

サンプルのpHがpH5~7から逸脱している場合容量滴定法

カールフィッシャー反応に最適なpHは5~7(中性~弱酸性)ですが、サンプル中に塩基性物質や酸性物質が含まれている場合は、最適なpHの範囲から逸脱する恐れがあります。その結果、反応に時間がかかったり、終点が来なくなります。

サンプルのpHがpH5~7より逸脱している場合への対応策

カールフィッシャー反応に最適なpHの範囲内になるよう、酸性物質または塩基性物質などの中和成分を添加します。

塩基性サンプル用

サンプルが溶解しにくい場合容量滴定法電量滴定法

メタノールへの溶解性が低いサンプルの場合、水分を抽出できず正確に滴定することができません。
溶解性が悪いサンプルの例として油類糖類、無機塩などがあります。

1.サンプルが油類の場合への対応策

油類のサンプルの場合、メタノールへの溶解性が低いため、別途、カールフィッシャー反応に影響を及ぼさない溶解剤を添加する、もしくは、溶解剤が含まれる脱水溶剤や陽極液を使用する必要があります。

2.サンプルが糖類の場合への対応策

糖類やたんぱく質、炭水化物のサンプルなど、メタノール系の脱水溶剤で完全に溶解しない場合、別途、カールフィッシャー反応に影響を及ぼさない溶解剤を添加する、もしくは、溶解剤が含まれる脱水溶剤を使用する必要があります。

容量滴定法

滴定液
溶解剤を含む脱水溶剤

3.サンプルが無機塩・プラスチックの場合への対応策

無機塩やプラスチックなど有機溶剤に溶解しないものは、水分気化法を使います。別途、カールフィッシャー反応に影響を及ぼさないメタノールの揮散を防ぐ添加剤を含む試薬を使用する必要があります。サンプルを気化装置で加熱し、発生した水分を含むキャリアガスをカールフィッシャー装置に導入して、水分量を測定します。

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