情報誌 HPC NEWS vol.51 食品・環境分析の最新技術や話題をご紹介

情報誌 HPC NEWS vol.51

残留農薬分析におけるアナライトプロテクタントとしての脂肪酸混合物の有用性

地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 阿久津 和彦

はじめに

GC/MS(/MS)による残留農薬分析で、共存成分の種類や量の違いによる測定対象農薬のピークレスポンスの変化(マトリックス効果)がしばしば問題となる。例えば、農薬成分と有機溶媒のみから成る標準溶液(溶媒標準溶液)の測定結果から絶対検量線を作成して、食品試料に添加した農薬の回収率を算出する場合、見かけの回収率が100%を大幅に超える異常値を示すことは珍しくない。
このような正のマトリックス効果は、装置流路内の活性点に対する試料成分のマスキング効果によって説明できる。図1に注入口における正のマトリックス効果の模式図を示した。まず、溶媒標準溶液では、活性点との相互作用(吸着・分解)により検出器に到達する農薬分子数が減少するため、注入量に対応する本来のレスポンスが得られない。

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