【人工液 評価方法事例】人工汗液(ジャングル試験用)
~ポリウレタン製品の加水分解(経年劣化)に対する耐久性試験評価~

一般的にポリウレタン樹脂加工品は、経時劣化による剥離やひび割れが発生することがあります。
発生する原因として、使用環境や保管環境における温度・湿度・紫外線による劣化が考えられます。
その中で特に問題となるのが加水分解による劣化で、高温多湿の環境下にさらされると、化学反応を起こし、ポリウレタン樹脂の剥離・ひび割れなどの脆化が発生します。
本評価方法事例では、当社製品の人工汗液(ジャングル試験用)をご活用いただいているアシダ音響株式会社さまの評価方法事例をご紹介します。
試料を高温下で人工汗液の飽和蒸気にさらすことで、劣化を促進させ、加水分解に対する耐久性試験を行いました。
ポリウレタン製品の経年劣化を模擬的に再現する試験です。
従来の試験方法の結果と、ジャングル試験の結果とを比較しています。ジャングル試験においては当社製品の「人工汗液(ジャングル試験用)」を使用しています。
※ 熱帯雨林のジャングルのような高温多湿の環境下で行う加速劣化試験

目次

人工汗液(ジャングル試験用)の開発と特徴

  • 目的:ポリウレタンなどの耐加水分解性評価用
  • 背景:高温多湿環境での経年劣化や加水分解の問題
  • 従来試験法の課題:実環境との乖離、加速評価の困難さ
  • 本製品の特徴:実際の汗と高温多湿環境を模擬した実用性の高い試験液

従来の加水分解試験との違い

アシダ音響株式会社さまでは、湿度管理のみで行っていた従来の加水分解試験では、試験結果に問題がないにも関わらず、実際には2~3年で加水分解が発生する事例が確認されており、実態に即していない状況でした。

試験 試験液 試験条件 保管時間 実使用1年に相当する時間 耐用年数 結果
従来の加水分解試験 水(湿度管理のみ) 70℃ 95%RH 300時間 約54時間 5~6年 問題なし
実際の環境 - 実際の環境 2~3年 - 2~3年 劣化を確認

そこで、他の加水分解試験を調査したところ、人工汗液を利用したジャングル試験があることが判明し、人工汗液を製造販売している当社へ試薬調製をご依頼いただきました。当社で調製した人工汗液を利用したジャングル試験では、実際の環境で劣化した事例とリンクした整合性のある結果が得られました。

人工汗液(ジャングル試験用)を使った評価方法事例のご紹介

試験に必要なもの

  • デシケータ
  • 恒温器
  • 人工汗液(ジャングル試験用)
  • 各種サンプル(試料ABC

試験条件

  • 温度:70℃
  • 保管条件:168時間(1年分=28時間として)
    ⇒ 耐用年数約5年+1年

試験方法

  1. デシケータ内に試料を吊るす
  2. 人工汗液(ジャングル試験用)を試料に直接触れないように入れる

  3. 蓋をして密閉状態にし、70℃の恒温器に入れる

  4. 168時間経過後、恒温器からデシケータを取り出す

  5. 試料を取り出し、水洗いした後、乾燥させる
  6. 外観(はく離、ひび割れ等)に異常がないかを確認する

試験結果

項目 試料A 試料B 試料C
従来の加水分解試験(85℃85%RH300h) 問題なし 問題なし 問題なし
人工汗液ジャングル試験 目視 一部傷みあり 全体的にボロボロ 問題なし
水洗い 表皮破れあり 水洗浄中に崩れる 問題なし
乾燥後 擦ると崩れる 擦ると崩れる 問題なし
結果 加水分解を確認 加水分解を確認 問題なし
劣化確認までの時間 120h 96h 168h(問題なし)
推定耐用年数 4.2年 3.3年 6年以上

人工汗液を利用したジャングル試験では、従来の加水分解試験では問題がなかった試料(試料A、B)に劣化を確認することができました。

人工汗液を用いたジャングル試験の優位性

  • 実環境に近い評価が可能
  • 汗による影響を加味できる
  • 多様なポリウレタン製品に適用可能

林純薬工業の人工液シリーズ

林純薬工業では、人工汗液をはじめ各種JIS規格に基づいた多彩な人工液のラインアップをご用意しています。
今回、ご紹介した試験方法以外のお客さま独自の試験法に適した組成や濃度、規格のご相談も業界・分野問わず承っております。
製品や試験法についてご質問、詳細のご説明をご希望の場合はお気軽にお問い合わせください。

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