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【人工液 評価方法事例】 人工汗液(酸性・アルカリ性)/人工酸性雨液
~電気亜鉛めっき(3価クロメート被膜化成処理)処理製品の耐食性評価~
汗を原因とする外観不良の再現テスト
金属製品などの加工や生産において、意図しない要因で不良品が発生してしまうケースがあります。その原因が人の汗や雨などの付着です。生産現場で、室温調整や手袋など、製品に汗がつかないように対策をしていても汗が製品に付着しサビや変色を起こすことがあります。また、製品の流通過程において雨水に濡れてしまうことも考えられます。
外観不良が発生した場合、製造メーカーは発注企業からその原因特定と対策が求められます。しかし、発生原因がわかっていても、再現できなければ、原因特定はできません。
そんなときに活用できるのが試薬です。本評価方法事例では、めっきや表面処理を行うI工業さまのご依頼で行った人工汗試験を紹介します。
腐食性評価に至った経緯
I工業さまは金属製品などの表面処理を行う企業です。
いくつものめっき加工技術を持ち、オーダーに合わせた加工を行なっています。数千、数万の単位で納品するため、製造工程は厳格化されています。しかし、なんらかの原因で不良品が発生することがあります。また、近年は、人の目にふれにくい部品でも外観品質が求められるそうです。
今回は、ある部品で発生した外観不良に関する報告書に再現記録を記載するため、人工汗試験を実施しました。製造ラインを調査したところ、人の汗によるものだと推測されたからです。
不良状態を確認し、その原因を明らかにするためには、再現テストは不可欠です。しかし、テスト用に人の汗を集めるのは容易ではなく、成分のバラツキも考えられます。また、試験方法は業界で規格化されておらず、JIS規格にも対応していません。
そのため、成分を定めている当社の人工汗液を使用して外観不良の評価試験を行うことになりました。
電気亜鉛めっきを施した部品の評価方法事例のご紹介
評価の目的
- 人工液を使用して外観不良の再現テストを行い、目視により不良の発生原因を特定すること
- 「人工汗液(酸性)」「人工汗液(アルカリ性)」「人工酸性雨液」の3種の人工液を用いて、どの製造工程で外観不良が発生するかを確認する
評価の概要
預かり品 3種類
B:硝酸活性後製品(めっき途中)
C:3価クロメート処理品
評価に必要なもの
- ① 人工汗液(酸性)EP 500ml
- ② 人工汗液(アルカリ性)EP 500ml
- ③ 人工酸性雨液 EP 200mL
- 恒温槽(40℃に設定可能な低温インキュベーター)
- スポイト
- 発泡スチロール(試料の平面置きに使用)
評価手順
- 試料の準備
A:鉄素地(めっき前)、B:硝酸活性後製品(めっき途中)、C:3価クロメート処理品の各状態の試料を用意し、表面を清浄にする。
- 人工液の滴定
各試料(A,B,C)を平らな発泡スチロール上に置き、3種の人工液(①,②,③)をそれぞれスポイトで滴定する。
- 恒温槽での保管
滴下した試料を40℃に設定した恒温槽内で72時間保管する。
- 観察と評価
72時間後、各試料の外観を観察し、変色、さびなどの外観を評価する。
評価結果
A:鉄素地(めっき前)
鉄素地(めっき前)では、すべての人工液でさび(赤さび)が発生したが、さびの程度は下記の結果となった。
③人工酸性雨液 > ①人工汗液(酸性) > ②人工汗液(アルカリ性)
B:硝酸活性後製品(めっき途中)
硝酸活性後製品(めっき途中)では、人工酸性雨液で黒い外観の変色が確認された。
C:3価クロメート処理品
3価クロメート処理品では、いずれも腐食は発生しなかったが人工酸性雨液で白色の外観変色が観察された(ナトリウム成分の析出と推定)。
評価結果からの考察
- 工程の各段階で異なる外観不良が発生することが確認された
- 硝酸活性後製品(めっき途中)の段階で人工液に対して脆弱性を示した
- 3価クロメート処理品では腐食は発生しない
林純薬工業の人工汗液・人工酸性雨液
当社では、汗に対する浸漬腐食試験に使用できる人工汗液やめっきの耐食性試験方法に適用する人工酸性雨液を提供しています。
人工汗液は、酸性とアルカリ性があり、人間の汗の成分と極めて類似しています。人工酸性雨液は、自然由来の液体を模擬した試薬です。
いずれもJIS規格に対応しており、製品・部材の耐性試験などに用いられます。
今回ご紹介した試験方法以外にも、お客さま独自の試験法に適した組成や濃度、規格のご相談など業界・分野問わず承っております。
製品や試験法についてご質問、詳細のご説明をご希望の場合はお気軽にお問い合わせください。