人工液でさびの原因の特定を目指し、品質向上につなげる
因幡鍍金工業株式会社
因幡鍍金工業株式会社
因幡鍍金工業株式会社さまは、大阪市生野区に拠点を置く表面処理加工業者さまです。
電気亜鉛めっき(自動車部品・弱電部品他)を中心に、3価クロメート処理やハイニッケル亜鉛合金めっきなど、さまざまな表面処理を行っています。
近年は、マイクロネジの表面処理にも取り組まれています。
常に品質向上を追求し、時代とともに変化する社会的課題に対応されてきた因幡鍍金工業株式会社さま。
今回は、品質向上を目的とした再現試験において、林純薬工業の人工液をご活用いただきましたので、お話を伺いました。
- 納入後に外観不良のトラブルが発生したため、原因を特定したい
- 滴原因によって、有効な再発防止策を報告・展開したい
- 豊富なラインナップの中から最適な人工液をご提案
- 人工液を用いた再現試験の実施
- 主力製品の品質向上
- エビデンスに基づく再発防止策の確立
事業の核は、金属の耐食性を向上させる電気亜鉛めっき加工
事業内容について教えてください。
関東さま
当社は、自動車産業をはじめとする製造業で使われるネジやボルトなどの部品に電気亜鉛めっき加工を行っています。お客さまからお預かりした鉄鋼素材に電気鉛めっきを施し、外観・耐食性を向上させます。
ただ、亜鉛は鉄よりも酸化しやすく錆びやすいという性質があり、水分や腐食性物質に触れと白さびが発生して外観・品質が損なわれてしまいます。
そこで、三価クロメート被膜処理でワーク品をコーティングすることで、通常の電気亜鉛めっきよりもさらに防錆効果を向上させているのです。
電気亜鉛めっき加工はどのような部品で行われるのでしょうか。
関東さま
自動車のエンジンに関わる部品やタイヤホイール、建設現場でも用いられる高圧ホースの継手となるナットなど、電気亜鉛めっきが施される部品は多岐にわたります。耐食性が高い分、厳しい環境下で使われるような金属部品が多いですね。当社の主要なお取り引き先も、自動車産業や建築業に関わる企業さまが中心です。
品質向上に向けた再現試験に、人工汗液・人工酸性雨液を採用
外観不良が発生した背景を教えてください。
関東さま
先ほどお伝えした通り、当社は電気亜鉛めっきに加え、さらにクロメート処理を施すことで耐食防止を徹底するなど製造工程を厳格化しています。しかし、納品後にお客さまから「白さびが発生した」とご連絡をいただくケースが複数報告されていました。白さびの発生とはつまり、表面の三価クロメート皮膜の劣化によって、亜鉛の腐食が進んだことによるもの。それだけははっきりしているのですが、具体的な原因を特定できずにいました。
また、白さびが発生するまでに1~2週間とばらつきがあったり、温度や湿度といった条件で腐食の進行速度が変わったりと、どのような条件下で品質不良が起こるのか、見極めるのも非常に困難だったのです。品質不良を減らすべく、社内でさまざまな検査や試験を行っていました。
白さびの原因を究明するために、従来はどのような検査や試験を行っていたのでしょうか。
関東さま
主に3つの段階を設けて検査や試験を行っていました。
最初の段階として「外観検査」。膜厚測定器を用いて膜厚を測り、JIS規格に基づいた数値で電気亜鉛めっきがきちんと施されているかを確認します。
問題が見られなければ、次の段階として「表面の元素分析」に移り、めっき表面のダメージや異物混入の有無を調べます。ここまでの過程でも異常が見受けられなければ、皮膜下の亜鉛、もしくはその下の金属自体に要因があると考えられます。その場合第3段階として、めっきを剥離し素材を検査したり再現試験を行ったりして、通常製品との比較、原因特定を図っていました。
品質管理において、再現試験は特に重要なプロセスです。しかし白さびの発生条件を調べるにあたっては試験方法が業界で規格化されておらず、信頼性のある結果が得られにくいという課題があったのです。
そこで林純薬工業さんに相談したところ人工液を勧めていただき、再現試験用として「人工汗液(酸性)」「人工汗液(アルカリ性)」「人工酸性雨液」を選択しました。
人工液の数あるラインナップの中から、なぜその3種を選ばれたのでしょうか。
関東さま
白さびの発生要因が、出荷してからお客さまのもとに届くまでの物流過程にあるのではないかと推測したからです。
白さびは、酸化だけでなく水分の付着によっても発生します。そのため、人の手で運搬される際に汗が付着することで発生するか、雨や気温、湿度など環境的要因のいずれかに絞り込めると考えました。
そこで再現試験では、電気亜鉛めっきを施した試料を各人工液に浸し、デジタルマイクロスコープで腐食状態を観察するという手法を取りました。
再現試験ではどのような結果が得られましたか。
関東さま
人工汗液によって腐食が発生した試料に、結晶化した塩が付着していることがわかりました。
これまで独自に行ってきた再現試験でも同様のケースはあったものの、結晶のサイズとしては今までで一番大きなものでした。
今後もより細かく条件を設定して分析の精度を上げる必要はありますが、汗の付着防止は亜鉛の腐食を抑制する有効策になると確証を得ることができました。
このような成果を得たことで、現在当社では、なるべく人の手が触れないよう仕切りやふたを使ったり、納品物を人の出入りが少ない場所で保管したりと、これまで以上に品質向上に向けた取り組みを進めています。
お客さまの期待を上回る品質を追求し続けるために
御社の品質改善に向けての取り組みは、並々ならぬものだと感じます。品質へのこだわりは、何に由来するのでしょうか。
関東さま
常に社長が「お客さまが満足する品質」を追求しており、それが社風として浸透しているのが大きいのだと思います。
そして私自身も、良いものをつくりたい、あらゆる可能性を試してさらに高みを目指したい、という探究心が第一にあったからこそ、何度も再現試験を行っていました。
森さま
私が代表取締役に就任した当時も、お客さまが品質を重視されている印象は強いものでした。
しかし現在は、以前にも増してお客さまの求めるレベルが高まっており、さらにワンランク上の品質を求められる場面も増えたと肌身で感じています。
世界基準で見ても日本の製品品質は評価が高く、国内においても、品質向上はクリアすべき要件となっています。いかにお客さまが品質を重視されているか、製造現場の従業員にも積極的に呼びかけ、意識の共有を図るようにしています。
品質管理をご担当される上で、日頃から心がけていることを教えてください。
関東さま
スピード感を持ち、迅速に対応することを念頭に置いています。
お客さまには結果だけを示すだけでなく中間報告もその都度行い、双方向的なコミュニケーションのもと仕事を進めることに重点を置いています。
また、お客さまと自社の互いにメリットが生まれるよう、コスト意識も持って取り組むことも大切にしています。
当社をどのように評価していただいていますか。
関東さま
製品の品質、コスト、納期、すべてにおいて水準が高いと感じています。
また、それらに匹敵する付加価値を生んでいるのが、営業ご担当者さまの提案力の高さであると全幅の信頼を置いています。
品質管理の業務では、社内外問わず知見のある方から意見を募ることが重要です。心強いパートナーとして、今後とも幅広くご相談させていただきたいです。
今後の展望をお聞かせください。
森さま
近年、日本の産業構造は大きく変化しており、ネジやボルトは小型化・軽量化が進んでいます。現在流通している自動車部品も、今後は電気自動車(EV)の生産増加や新素材の登場に伴い、淘汰される可能性も十分にあります。
その中で、今後は当社が得意とする電気亜鉛めっきだけでなく、合金めっきなどほかの表面処理を求められる場面も増えていくでしょう。
この状況を会社が進化する好機と捉え、これまで取り組んだことのなかった表面処理にも挑戦していきたいと考えています。
関東さま
常に社長が「お客さまが満足する品質」を追求しており、それが社風として浸透しているのが大きいのだと思います。
そして私自身も、良いものをつくりたい、あらゆる可能性を試してさらに高みを目指したい、という探究心が第一にあったからこそ、何度も再現試験を行っていました。
〒544-0012 大阪市生野区巽西4丁目9番7号
事業内容
電気亜鉛めっき/三価クロメート・三価ユニクロ・三価黒色クロメート/ニッケル亜鉛合金メッキ(ハイニッケル)などの表面処理加工
Webサイト
https://inaba-mekki.co.jp/